【2023年12月迄のご購入者様へ】「AIセミトラ・イグナイター」バージョンアップのお願い
ホンダ CB750Four K4AIセミトラ・イグナイター

そう簡単にはいかない?CB用AIセミトラ・イグナイター

 W1SA/W3専用のAIセミトラ・イグナイターは、オレ様のW3でも常に使用していて、オレ様的にはとても気に入っています。「何処が?」と言われると、感覚的なもので物凄く説明しにくいんですが、しいていうなら、「安定感と心もとなさ」とでも言うんでしょうか?安定感と心もとなさの矛盾が同居している感じが気に入っています。
 そして、これには色んな理由があるんですが、AIセミトラ・イグナイターは、ノーマルのポイント点火と比べると全然違うし、一般的なセミトラと比べてもちょっと違います。エンジンが止まってしまいそうな細さは全然ありませんが、かといって、コンピュータ制御されたフルトラ(W650とか)程の緻密さもありません。この混ざり具合がイイ感じなんです。
 ポイント点火/一般的なセミトラ/AIセミトラ・イグナイター、正直、どれがいいのか、何が正解なのかは、ありません。それは、乗る人の好みで、オレ様はオレ様の好きなものを作ってみただけです。

 さて、何処かの記事でも書いているんですが、実はオレ様はセミトラには否定的です。というのも、やはり内燃機関の性能を求めるには、物理接点を排除してコンピュータ制御するフルトラ・イグナイターが全ての面で勝っているからです。始動性とか安定性とかいうレベルを超えて、エンジンの故障や部品の消耗といった事も含め、何から何まで、コンピュータで制御されたフルトラ・イグナイターの方が圧倒的に優れています。
 ところがねぇ……。CBに乗って「いやいやいや、コイツ、緻密な制御したら楽しくないだろ」となった訳です。ただ、だからといってポイント点火のままでは、あまりにも使い勝手が悪く、乗り味は損なわずダメな部分を最低限何とかするべく、CB版AIセミトラ・イグナイターの作成をしています。

 そんな訳で、CB版を作る上で色んなデータ取りをします。

ポイント点火のノイズ

 ノーマルのポイント点火をショボいオシロスコープでキャプチャしてみます。
 赤いグラフが、コイルーポイント間の電圧の動きです。
 緑の四角で囲んでいる部分は、ポイントがコンタクト(くっ付く)する時のノイズです。コイルを通り抜けてきた12Vが、ポイントを通り抜けてアースに落ちる際に、近づいてきたポイントの接点にリークすることでこんなノイズが出ます。
 青い四角で囲んでいる部分は、ポイントがブレーク(離れる)する時のノイズです。こちらは、ポイント云々以前に、コイルの逆起電流というのが発生するので、盛大なノイズが出ます。これは、現象の大小はあれど、コイル状のものに電気を通したり止めたりすると必ず起こるものです。リレーでも、ホーンでも、電磁石を使ってるものは全て出ます。ただ、ポイント点火の場合、これがちょっと厄介で、このノイズのせいでポイントがスパークしてしまい、二次コイルの電気が1次コイル側に逃げて、プラグの火が弱ったり安定しなくなったりします。

 対して、こちらは、過去にオレ様が作成して使っていた普通のセミトラです。

普通のセミトラのノイズ

 赤いグラフはポイントにかけている電圧で、5Vしかかけていません。ポイントがコンタクト(くっ付く)するとアースに落ちでグラフが下がり、ブレーク(離れる)すると5Vに復帰します。
 黄色いグラフはコイルーセミトラ間の電圧です。ポイントがコンタクトする前にノイズが出ていますが、ブレークする時の嫌なノイズは出ず、それだけ強力な火花がプラグから出てるハズです。

 そこから、更にAIセミトラ・イグナイターにしてみると……なにやら、めちゃくちゃ調子が悪いです。

AIセミトラのノイズ

 ノイズは綺麗さっぱり無くなっているものの、AIが全く機能していません。更に、時々点火もバラつきます。よくよくグラフを見ると、ポイントの動きを表す赤いグラフが変です。本来想定しているコンタクト時間よりも、どう見ても長いです。

CBのポイントは、ほぼ1/2でコンタクトしている

 今度は、2つのポイントの動きをキャプチャしてみると、W1SA/W3に比べて、ポイントのコンタクトの割合がかなり大きい事が分かりました。グラフが下がっている時間は、1/4程度だと思っていたんですが、実際はほぼ1/2で、2つのポイントは、ほぼ交互にコンタクトしている状態です。
 AIセミトラ・イグナイターは、ポイントのブレーク時に反対側のポイントのコンタクトタイミングを予測計算するので、ここに、予測計算するだけの時間的余裕が必要なんですが、ほぼ交互にポイントがコンタクトしている状態だと、AIが計算する前に反対側のポイントがコンタクト状態になってしまい、AIが機能しないようです。

 これ、結構な大問題で、現状のAIセミトラ・イグナイターのAIでは対応できません。出来れば、共通のプログラムで、ドエルタイムやAIの学習条件なんかの変更だけで行きたかったんですが、プログラムを丸ごと作り直さないと対応できそうにありません。
 ただ、幸いなことに、ハードウェアの部分は、今の所共通化できそうです。

 前に、CBのコイルの磁気飽和時間(最大)を測ったら、11ミリ秒超えだった理由はコレだったんですねぇ。たしかに、このやたらとデカいドエルアングルなら、アイドリングで17ミリ秒とかのドエルタイムになって、ポイント点火としては普通の状態になります。

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