【2023年12月迄のご購入者様へ】「AIセミトラ・イグナイター」バージョンアップのお願い
ホンダ CB750Four K4AIセミトラ・イグナイター

CBのAIセミトラ・イグナイターが見えてきた

 W1SA/W3用のAIセミトラ・イグナイターのプログラムを小改編した程度では、全くうまくいかないCB用AIセミトラ・イグナイターですが、そもそも現状どうなっていて、AIセミトラ・イグナイターではどうしたいのかというのが明確でないと、プログラムを作るにも目標を見失ってしまいます。
 そこで、その辺についてグラフにしてみました。

CBのノーマルドエルタイムと理想のドエルタイム

 横軸が回転数で、縦軸がドエルタイム(コイルの充電時間)です。単位のmsは「ミリ秒」で、1秒=1,000ミリ秒です。
 ノーマルのポイント点火では、青色のグラフのようになります。アイドリングの1,000回転では30ミリ秒程度の充電時間になります。そこから、回転数が上がるにつれて、充電時間はどんどん短くなります。
 ところが、コイルの磁気飽和する適正な充電時間というのは、電圧に依存するだけで、基本不変です。CBの場合、10ミリ秒前後が適正のようです。ということは、2,500回転以下の低回転ではコイルに無駄な電気を流している状態で、コイルは負荷で加熱するし、バッテリーもどんどん放電してしまいます。逆に3,500回転を超えると、今度はコイルの充電不足で、プラグの火花は弱まる方向に向かいます。

 実は、この辺、純正では非常によく考えられていて、ショボい発電システムとバッテリーでは、低回転では、コイルにロクな電圧をかけることが出来ず、多少長い充電時間にした方がプラグの火花は安定します。また、高回転では、機械式のレギュレーターが電圧制御をしきれず、15Vを超えるようなオーバーチャージをしてくるので、結果的に高回転でもなんとかプラグに火が飛びます。あと、高回転だとプラグが焼けて火が飛びやすいというのもあります。
 ただ、この状態って、健康な電気系とは言えないと思うんです。特にシステムの電圧が安定しない機械式のレギュレーターというのは、車体のあらゆる部分に負担をかけるので、ICレギュレーターに交換している人も多いと思います。ICレギュレーターに交換すると、それだけで低回転の発電効率が上がります。高回転でオーバーチャージして、バッテリーを痛めたり電球が切れたりする事もありません。ただ、高回転でコイルに流す電圧が不足してしまいますが。

 そこで、AIセミトラ・イグナイターでは、その辺のジレンマというか、イヤな部分を解消するべく、緑色のグラフを目指します。
 基本、コイルの充電は11ミリ秒ちょっとまでしかさせません。これで、低回転の電気の無駄遣いを無くして、コイルを保護します。アイドリングレベルだと、ブレーキランプ分位の節電になります。
 回転数が上がって、ノーマル(青いグラフ)の充電時間がどんどん短くなると、充電時間が11ミリ秒を割りますが、その頃には発電機がちゃんと機能しているので、そのままで大丈夫です。ただ、9ミリ秒あたりまで来ると、やはりコイルの充電時間が短いと思うので、AIセミトラ・イグナイターには9ミリ秒の充電時間を維持させます。
 更に回転数が上がると、コイルに電気を流し続ける時間が長くなりすぎて、コイルに休む時間が無くなってしまいます。そこで、ある程度の負荷を条件にコイルに電気を流す時間の限界を設定します。グラフでは、コイルの駆動率は75%にして、5,000回転から先は、なだらかに充電時間が短くなります。

 どうですか?これ、良さそうじゃないですか?もちろん、エンジン始動時は、補正無しで、コイルにしっかり充電させて始動性を上げ、8,000回転を超える時は、オーバーレブなので補正をやめます。
 点火時期そのものは、ポイントとガバナーに頼るので、基本的な乗り味は変わらず、低回転での省電力と、高回転でのパンチを出せるといったところでしょうか。当然、ノーマルの機械式レギュレーターでも、ICレギュレーターでもです。

 さて、これを実現すべく、実は既にプログラムも書けていて、机上でジェネレーターに繋いでテスト中です。
 ちょっとオシロスコープで測った画像も載せておきます。黄色いグラフがポイントの動きで、赤いグラフがAIセミトラ・イグナイターが補正したコイルの充電時間になります。それぞれ、グラフが下がっている時が、ポイントがコンタクトしている時と、コイルに充電している時です。

 300rpm程度の時……

 エンジンがかかってないと判断して、ポイントの動きに合わせてコイルに充電しています。大体100ミリ秒位電気通してます。

 1,000rpm程度の時……

 エンジンがかかって、アイドリング程度の回転だと、ポイントは30ミリ秒位コンタクトしますが、AIセミトラ・イグナイターは、11ミリ秒程度にまで補正して、余計な電気を流さなくなります。

 3000rpm程度の時……

 ポイントの速さがコイル充電時間に近づいて、ポイントのコンタクト時間も、コイルの充電時間も10ミリ秒程度になります。

 5000rpm程度の時……

 ポイントのコンタクトしている時間が、6ミリ秒程度まで短くなってなっていますが、AIセミトラ・イグナイターが補正してコイルには9ミリ秒程度の充電時間を確保しています。ノーマルのポイント点火より、グッとパワフルな点火が期待できます。

 8000rpm程度の時……

 コイルの駆動限界を超えていると判断して、コイルの充電時間は6ミリ秒ちょっとまで下がってきています。

 8200rpm程度の時……

 オーバーレブで、これ以上頑張る必要がないので、ポイント点火と同じ動きになって、コイルへ余分に電気を送るのをやめます。

 今の所、こんな感じです。AIが判定に困るような所だと、まだ微妙に怪しい動きをしているんですが、概ねいい感じです。
 ここから先、もう少し煮詰めたら、車体に積んで実走行テストなんですが、実は、去年塗装に出した燃料タンクとサイドカバーが未だに戻って来ず、実走行どころか車検も通せません。いや、まいったな。

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