ホンダ CB750Four K4AIセミトラ・イグナイター

CB用AIセミトラの癖とキャブセッティング

 おかげ様でポツポツ売れているAIセミトラ・イグナイターですが、W1SA/W3用とCB750Four用ではほぼほぼ同じ回路を使っているものの、ICに書き込まれているプログラムはまるっきり違います。なので、動作は全然違っていて互換性もありません。しかもAIセミトラ・イグナイターを取り付けた時の乗り味も全く違います。W1SA/W3用はかなりハッキリと乗った時の違いが分かるし節電効果も絶大ですが、CB750Four用だと変化はあんまり感じないし、節電効果もW1SA/W3用程強力じゃありません。
 「じゃ、CB750Four用って要らなくね?」と思いますよね。ハイ、要らないと思います。やっぱり、どう考えてもどんな視点から観ても某有名フルトラの方が全然良いし、そちらの方が間違いなくオススメです。なのにセミトラというのは、もはや拘りでしかないです。フルトラの正確で滑らかな動作ではなく、コンタクトブレーカーとスパークアドバンサーを使った曖昧さや扱いにくさを楽しみたいというちょっとした変態向けで、オレ様は正にその変態の一人なんです。

 さて、そんなAIセミトラ・イグナイター for CBですが、ご購入頂いたかたから失火したみたいな感じが時々するという連絡を頂きました。「……ん、マズイ、なんかやらかしちゃったかも」と思いつつ詳しい状況を聞いてみました。
 お話しによると、多分それ程走行ペースが上がっていない状態で、微妙なアクセルワークを繰り返していると症状が起こるようです。
 これは……オレ様が一番やらない乗り方です。オレ様は毎日オートバイに乗ってはいるものの、乗ってるオートバイはZRX1200Sの輸出仕様車で、100馬力を余裕で超えて多分120馬力位は出てるハイパワー車なんです。なのでパワー慣れしちゃっててCB750Fourだと遅くて遅くて結構グイグイアクセルを開けていっちゃうんです。という事は、オレ様のテスト不足なので早速テスト走行を200キロばかりしてきました。

 ある程度不具合条件が判っているので、条件を気にしながら1日中走れば大体の理由は分かるだろうと想像して何種類かのセミトラを持って、キャブレターのエアスクリューをサービスデータ通りの1回転戻しにして出発です。

 出発してしばらくは何事もなく走ってたんですが、エンジンが焼けてくるとイヤな感じがするようになってきます。まず、エンジンブレーキの効きが甘く回転の下がりが悪くなってきました。同調が狂ったみたいな感じです。更にアイドリングを調整しようとするとバラつきが大きく出てアイドリングをあんまり下げられません。そして、僅かなアクセルワークで乗ると失火のような症状も出始めました。ただ、完全な失火ともちょっと違う感じです。感覚的には、負圧キャブレターでチョークをほんの少し引いてるみたいな感じです。
 試しに持ってきた他のセミトラも全部試してみたところ、トランジスタの種類に関係なくセミトラにすると失火のような症状が再現します。コンタクトブレーカー点火にしてしばらくすると治ります。

 この事象になりそうな原因は、まず間違いなく燃調不良と思われたので、点火をAIセミトラ・イグナイターに戻してからエアスクリューを調整しながら更に走り込みます。

芦ヶ久保で一休み

 結果、エアスクリューを1.25戻し程度にしてしばらく走行すると特に問題なく走るようになりはじめ、エンジンブレーキもちゃんと効くし、アイドリングも安定するようになってきました。
 更にどんどん薄くして1.5戻し位まで戻すと流石にちょっと薄い感じで低回転でのアクセルワークに少しザラツキみたいな感じが出てきます。どうやら、燃調の問題のようですね。
 ちなみに、4番のプラグを外してみてみると……

 こんな感じでした。エアスクリュー1.5回転戻しまで薄くしてたので焼け色は白くなってますが、焼け自体は悪くないです。そろそろ交換かな?

 ところで、そもそも何でキャブレターのセッティングがサービスデータの通りじゃないのかという疑問もあると思います。これについては……すみません!分かりません!!
 本来、点火方式が変わるだけで、火花自体はキャブレターのリセッティングが必要な程変わるとも思えないんです。ただ、エアスクリュー1回転戻しの濃い状態だと明らかにエンブレが弱まるという状態だったので、アクセル全閉時に本来燃え切らない燃料も燃えてしまっているのではないか?とも想像でき、とすると、やっぱり燃焼のしかたの差が出ていると思います。なんちゅーか、んーん?という感じですみません。でも、実際に試してみるとそうなんです。
 セミトラを組み込んだ車両全てがおなじ現象になるのかは分かりませんが、「そんな事例もあります」ということで、今一つ調子が出ないという方は、エアスクリューの調整をしてみるといいかもしれません。


 あと、今回の事象とは違うんですが、似たような症状になる可能性で、低回転で電圧低下とドエルタイム不足というのもあります。これは、AIセミトラ・イグナイター固有の部分とCBのフィールドコイル式ジェネレータの特徴の両方に原因があります。

 フィールドコイル式ジェネレーターはマグネットが無く、代わりにフィールドコイルに電流を流して磁界を作り、ジェネレーターコイルで発電します。つまり、発電の為に結構な量の電気が必要です。なので、バッテリー電圧が下がってくると発電の為の電気も足りなくなって、発電効率が下がります。そうでなくともフィールドコイルに電気食われているので、結果としてマグネットのあるジェネレーターより遥かに速く電圧が降下します。

 それを踏まえて……

 AIセミトラ・イグナイターは、節電の為にイグニッションコイルに電流が流れる時間を制限しています。その制限をかける仕組みは単純なAIで管理しています。
 例えば、1,000回転の時、ノーマルのドエルタイムは40ミリ秒から50ミリ秒あたりだと思います。AIセミトラ・イグナイターは、これを12ミリ秒を目指して絞っていきます。なかなかの節電になっていいでしょ?
 ところがですね、一つ問題があります。電気です。電圧が12Vの時はこれでいいものの、電圧が下がってくると12ミリ秒のドエルタイムでは足りなくなってきます。まぁ、実際の所、AIセミトラ・イグナイターがドエルタイムを12ミリ秒まで下げきる事はあんまりないんで、それ程神経質になる事も無いだろうと思っていますが、それでも電圧があまりにも下がるとギクシャクしてくるはずです。しかも、前述の通りCBのフィールドコイル式のジェネレーターは電圧が下がり始めるとドンドン下がってしまいます。そんな時は少し回転数を上げて走ってジェネレーターにシッカリと発電させて、走行後はバッテリーの充電をしてもらえればと思います。

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