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カワサキ 650RS W3整備

W3のオイル漏れを何とかしたい(4) ~なんとか完成~

 やっとロッカーケースをエンジンに取り付け、無事にエンジンがかかるようになりました。想定外の事が起こって、都合3回もロッカーケースを載せなおしましたが、無事にエンジンもかかったし、オイル漏れも止まったので良しとしよう。

 さて、前回ロッカーケースを組み立てておいたので、今回は、ロッカーケースをヘッドに乗せるべく、エンザート加工するところからです。
 エンザート加工には、まずは下穴を開ける必要があります。この下穴も含めて、エンザート加工はやり直しが効かないので、ちょっと慎重になります。本来なら、シリンダーヘッドを外して、ボール盤を使うべきなんですが、シリンダーヘッドはエンジンに乗せたままで、やります。

 まず、今回使うエンザートと工具は、3つ穴の長いタイプの308と、ハンド加工用の挿入ツールです。ヘッドのアルミは、凄く柔らかいので、割りタイプの302でも全然問題無さそうですが、なんか308を使ってみたかったんです。

ハンド加工用エンザート挿入工具にエンザート308をセットしたところ

 なかなかお高いです。特に挿入ツールはかなりお高いので、サイズの合うボルトとナットを流用する場合もあると思いますが、今回の作業は、このお高い工具でないと、正しくエンザートを挿入できそうにありません。

ハンド加工用エンザート挿入工具の特徴

 エンザートを取り付けた挿入工具のアップです。赤丸の部分が重要です。Φ12mmの出っ張りがあるんです。下穴をきちんと作っておくと、この分エンザートを深く入れられるんです。一方、ボルトとナットを流用するとツライチまでしか挿入できなくて、面が出なくて使えないという訳です。

 というわけで、8mmのエンザートの下穴には11mmと12mmのドリルを使いました。

エンザート下穴

 こんな感じで電動工具を使って掘ります。今回は、8mmの308を使うので、11mmのドリルで20mm掘って、12mmのドリルで面取り+α程度さらって、エンザートがしっかり中に入るようにしておきます。

 エンザートは、挿入時にネジ山も切っていくので、オレ様の場合は、このタッピングペーストを使います。これ、普通のタップ作業以外でも、摩擦で熱が出るような金属加工全般に、かなーりいい仕事をしてくれて、お気に入りです。難点は、1キロもあって全然減らなって事位かなぁ?
 ちなみに、下穴加工もコレ使ってます。

 そして、いよいよエンザート挿入です。とにかく垂直に入らないといけないので、しつこく垂直を確認して挿入します。本来、下穴が垂直に掘れていれば、僅かな傾き程度なら、エンザートは挿入時に下穴に合って垂直に入るはずですが、なんせ下穴も手作業で微妙に甘い可能性があるので、とにかく慎重にいきます。幸い、下穴も垂直のようで、すんなりいきました。

正しく少し奥にエンザートの挿入ができた

 予定通り、面の少し下にエンザートが挿入できました。とりあえず、ここまではカンペキ!

 2か所のエンザートが終わったら、いよいよロッカーケースをシリンダーヘッドに乗せます。

 まずは、プッシュロッドの準備です。オレ様の場合、プッシュロッドの保管中は旗立ててます。

プッシュロッドの保管は、旗を立てて分かるようにしてある

 こうしておくと、場所と上下が分からなくなることは無いです。人によって、プッシュロッドに目印傷をつける場合もあるようですが、マスキングテープで旗立てておくだけで十分です。好きな事かけるしね。

ロッカーアームのクリアランスを調整

 1回目は、こんな感じでクシツールを使ってプッシュロッドを固定して、輪ゴムをかけたロッカーケースを戻してみましたが、これ、オレ様と凄く相性が悪かったです。エンジン反対側のオイルラインに当たるし、クシが邪魔でロッカーケース乗せにくいし、ゴムの力でロッカーアームが好きな位置に動かせないし、ガスケットズレるしで、いい所ありません。
 結局、一旦ロッカーケースを外して、クシと輪ゴムを使わずに、ピックツールを使ったら、すんなりできました。

プッシュロッドを定位置に動かすのに丁度いピックツール

 こんな形のピックツールを使って

ピックツールでプッシュロッドの位置を調整

 ロッカーケースを程々に固定しながら、こんな風にピックツールでプッシュロッドを捕まえて、ロッカーアームをプッシュロッドに乗せてやるだけです。うまく乗らない時は、プッシュロッドが上がっている時なので、その時は少しクランクを回してプッシュロッドを下げてやればロッカーアームを乗せられます。ロッカーアームが乗ったら、プッシュロッドが外れない程度に、クリアランス調整ネジを締めるだけです。
 人それぞれ、やり方があると思いますが、オレ様はこの方法がベストで単純で簡単でした。オイルラインもずらしたり外したりする必要ないしね。

 ところが……

また新たにボルト穴を舐めた

 2キロで増し締めしたら、赤丸の部分がナメました。「またやり直しかよ~」と文句をいいつつも、既にやった作業なので、サッサとできました。1時間もかからずに、再分解、エンザート挿入、再組立て完了でした。

 キックペダルをガンガン蹴って、全て正しく動作しているのを確認してから、タペットクリアランスを調整します。

ロッカーアームのクリアランスを調整

 これは、全然問題ないですね。いとも簡単です。
 あとは、タペットカバーを戻して、エンジンをかけてみておかしなところが無いかざっとチェックして終了です。

 今回、都合、3回もロッカーケースを載せて、更に確認なんかで仮組なんかしてるのも合わせると10回近くロッカーケースを乗せましたが、もの凄く慣れました。慣れると、ロッカーケースの乗せ降ろしで、「フレームやメインハーネスが邪魔で……」ということも無くなりますね。「この位置からこの方向にロッカーケースを入れてから回してやる」みたいな手順が良く分かりました。一応メモっとこ。

 ロッカーケースを載せる時……
・エンジン左ちょい前寄りから、ロッカーケースを横向きにして、ロッカーケースの後ろから入れる。
・ロッカーケースの後ろをプッシュロッド方向にもっていって、プッシュロッドをロッカーケースに入れる。少しメインハーネスを持ち上げる程度でいける。いけない時は、クランクを回して、長いプッシュロッドを下げる。
・ロッカーケースを正しい向きに回す。
・長いプッシュロッドがロッカーアームに乗るように斜め前から斜め後ろに下げる感じでロッカーケースを載せる。短い方は、後でピックツールで位置を合わせるのでどうでもいい。
・ハンガーを取り付けて、ハンガー部分のボルト4本のみでロッカーケースの位置決め。締め具合は、プッシュロッドの位置合わせの都合で適宜。

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